【ようこそ今村翔吾先生!】第167回直木賞候補作書評会レポート【中編】

さあ、書評会が始まります!



〈前記事:【まさかのスペシャルゲスト】第167回直木賞候補作書評会レポート【前編】



「300件くらいある訪問先で、ここがいちばん特殊やなあw」と笑ってくださる今村先生を大きな拍手でお迎えし、
生徒の「前回・前々回の直木賞候補作はどれを読んだのか」を報告する自己紹介(どんな自己紹介)をした後、
いよいよ書評会のスタートです!


過去の書評会は、持ち時間ひとり5分ほどであらすじと書評を発表し、
全員の発表が終わったら一回目投票、その結果を受けて議論ののち二回目投票、という流れでしたが、
今回は時間が限られていることもあり、前もってあらすじと書評の要点をまとめたレジュメを用意して、
それを補足する形で発表してもらいました。

今村先生到着の20分前にできたレジュメ。ギリすぎる


Rさん担当『絞め殺しの樹』


あらすじはざっくりと私がまとめ、各生徒に確認してもらって加筆修正しました。
書評の要点は、当日まで添削・書き直しをする中で、生徒と相談しながら作成しました。

Sさん担当『女人入眼』

最後に一言添えられている直筆メッセージは、直前生徒からの提案で追加


それでは、発表中の写真とあわせて、簡単ではありますが各書評をご紹介させていただきます。



河﨑秋子さん『絞め殺しの樹』を読んでくれたRさん
文章、構成の巧みさ、人間の悪の部分を生々しく描き出した筆力を評価した上で、
主人公に共感できない部分がある」、「一部と二部で描こうとしているものがずれているように感じる」と、
欠点も論理的に説明してくれました。

Tくんが発表中。


候補3回目の呉勝浩さん『爆弾』を読んだのは、過去2回候補になった『おれたちの歌をうたえ』『スワン』も読んでいるTくん
今回はミステリー要素、人間ドラマともに満足できるものではなかったようです。
様々な登場人物がそれぞれ問題提起をしようとしているのはわかるが、小説としてひとつの世界を築けていない
「(人物が)メッセージを伝えるための道具になっているように感じる」等、
過去作にはあった作者の強みが活かしきれていないと評してくれました。




こちらも候補3回目、窪美澄さんの短編集『夜に星を放つ』Hくんの担当でした。
ストレスなく読める読みやすさを挙げながらも、
各作品に出てくる『星』や『海』のキーワードにこじつけ感がある
「各話の設定が似ていてインパクトが薄い」と、客観的に評価してくれました。

実は過去2回、Hくんの読んだ候補作は2回とも直木賞を受賞しています!
果たして今回はどうなるでしょうか・・・?



永井紗耶子さん『女人入眼』Sさん担当。
抑揚を抑えた品のある文章はともすれば読みにくいものですが、それを「この時代の高貴な人々の慎ましさを表現している」と素晴らしい解釈で説明してくれました。
読了時に床にうずくまるほど心打たれた作品の魅力を、丁寧に、とても上手に伝えられていました。

Sさんが発表中。

今村先生もメモを取って聞いてくださっています・・・!




深緑野分さん『スタッフロール』AくんTくんふたりが担当してくれました。
物語が動いていく二部におもしろさを感じたこと、
本も分厚く長いお話なのにどんどん読めるリーダビリティの高さを評価していました。
また、「日本が舞台ではないのが気になった」のはとてもいい着眼点でした。


AくんとTくんが発表中。



5作の書評発表を終え今村先生からは、
「(『絞め殺しの樹』の書評を指して)林真理子さん(現選考委員のお一人)が言いそう!」
「全体聞いてて、確かにその作家さんの弱点てそういうところにあるよね、って思えるところけっこうあった」
「本当によく読めてると思う!毎回(書評を)送ってもらいたいくらい!」と、
うれしいお言葉をたくさんいただきました!
(白石はこの辺でもう一回泣きました)

「俺のときなんて言われてたんやろww」と笑う今村先生。



また、候補作から予想していることにも興味を持っていただき、
新刊一覧の模造紙を見て「なにこれ、すごいな・・・」と若干引き気味のリアクションもいただきました。笑

「誰か読んでるわけちゃうやろ?」と引いてる今村先生。(隣の奴が読んでます)



ここで生徒は一旦別室へ移動し、みんなで相談の上ひとつの予想を決めてきてもらいます。

その間、ここぞとばかりに直木賞について教わりまくる白石。

食い気味。


次に来そうな作家さん、可能性の低い出版社、版元による戦略など、
めちゃくちゃ貴重なお話をたくさん聞かせていただきました。

そして、みんなの意見がまとまったところで!
いよいよ受賞予想の発表です!


〈次記事:【みんなの受賞予想は・・・?】第167回直木賞候補作書評会レポート【後編】〉