【ドキュメント】直木賞発表鑑賞会の裏側【第一部】

こんばんは!
毎月40冊の小説を読む国語のエキスパート、白石です。(いただいた肩書をしつこく使っていくスタイル)

あっという間に1月ももう末。みなさん学年末や受験を控え、緊張感も増してくるころですね。
それぞれ望む将来に向かって一歩一歩努力を重ねていることと思います。
いまこそ塾をフル活用し、素敵な未来への一助としていただければと思います。



さて、先日のブログで紹介していただいた直木賞選考会当日のニコ生配信鑑賞会。
授業外の集まりだったこともありお菓子をつまみながらの楽しそうな光景を取り上げていただきましたが、
そこにいたるまでにあった彼らの戦い(?)を私からぜひお話させてください。



遡ること半年。
彼らの戦いは実は昨年6月から始まっていました。


この半年、毎月月初めの授業で配られていたのがこのプリント。
これは毎回白石がピックアップしているもので、前月に発売された文芸単行本のうち、
過去直木賞芥川賞を受賞した作家のものや自費出版本、ライトノベルなどを除いた、“次回直木賞候補作になる可能性がある本”のリストです。
生徒たちはこの半年間、ひと月に一枚渡されるこのプリントから候補作になりそうな本を見極めてきました。
そして12月初め、候補作発表の12月17日に先立ち、
実に240冊にもなったリストの中からひとり6作、候補作を予想したのです。
(白石の予想と同率以上の的中率をたたき出した生徒にはご褒美があります。)
 


直木賞が文藝春秋主催の文学賞ということを鑑み「せめて一冊は当てよう」とすべてを文藝春秋出版の本で攻める生徒、
「漢字二字のバシッと決めたタイトルは候補になりがち」という私の主観的アドバイスに頑なに従い続ける生徒、
選んだタイトルのならびになんとなく嗜好がにじむ生徒。
予想一覧を見るだけでも楽しくて仕方がありません・・・!



まあ当然私が勝つんですけど。
それでも2作当てた生徒がふたりもいたのには驚きでした。
なにかしらの勘が着実に身についている様子。



しかしもちろんこれは前哨戦。彼らの戦いはこれからが本番です。
発表された候補作から生徒たちはひとり一冊担当する作品を決め、
約一ヶ月後、直木賞を決定する選考会(今回は1月の第3水曜日)直前の授業で受賞作予想をする書評会を行います。

書評とは、(主に新刊の小説などの)文章作品を(大衆に紹介するため)客観的に解説、批評した文章のこと。
学校で書かされてきた読書感想文とは違い個人の意見や体験談などは入れず、客観性をもってその本と向き合い普遍的評価を見出す視点が必要です。
またこの書評会では全員でひとつの受賞作を予想するため、読んでいないほかの生徒にも担当作品のあらすじや魅力が伝わるよう、
全員が全作を等しく比較できるような内容のものにしなければなりません。

まずはなにより読み応え十分の候補作をしっかりと熟読することが大前提。
なの、です、が。
500ページを超える大作や読み慣れないだろう歴史小説が候補にそろった今回、半分以上の生徒がこの“読み通す”という段階で躓いてしまいました。

顔を合わせるたびに進捗を聞いてみても返ってくるのは芳しくなさそうなあいまいな返事ばかり、、、見守るこちら側にもじわじわと伝わってくる危機感。
読むことに関してはどうしたって助けることはできませんがせめてもと、
書評作成のサポートにポイントや作品を読み解くアドバイスなどをまとめた冊子を作って冬休みの課題としました。




自分が抱いた感覚の理由や根拠を明確にし、人に伝えるための言葉にする、というのは、想像するより内省的で複雑な作業です。
途中で行き詰まってしまっても、この冊子の項目についてひとつひとつ確認してくことである程度は整理できるように考えました。




が。
年明けの授業で確認するも、冊子を活用し書評がある程度の形になっているのはひとりだけ。
ついに書評会の前週に至って尚まだ読み終えてすらいない生徒がいる難航ぶりに、
最後には思わず私も「間に合いそうにないなら中止でいいよ。みんなで決めて」と判断を生徒に委ねました。

数日後、全員で話し合った彼らから、
「全員やれます。」と返事がきました。



中学生といえどなかなか時間の取りづらい冬休みを挟み、学校のテストや校外での活動もこなし、
ほかの講師に厳しく叱咤されながらも生徒たちは、それぞれに一生懸命取り組んでくれました。



そして週が明け、書評会当日。
机を円形に並べ、いつもとは違う雰囲気の教室で、
“中学2年生”が“直木賞候補作”を書評しました。




当日の書評会の様子は、次の記事で!>